PoetryとRyeの比較と使い分け:Pythonプロジェクト管理の選択肢#

Pythonプロジェクトにおいて、依存管理やパッケージ公開を行うためのツールとして、長らく Poetry が人気を集めてきました。しかし最近では、より高速かつシンプルな運用を可能とする Rye という新しいツールが注目されています。

本記事では、PoetryとRyeの比較、およびRye特有の機能や設計思想について整理し、どのような状況で移行を検討すべきかをまとめます。

PoetryとRyeの基本機能の対応#

以下に、主な機能についてPoetryとRyeのコマンドを対応表として示します。

PoetryとRyeの主な機能対応#

機能

Poetry

Rye

備考

プロジェクト初期化

poetry init

rye init

対話形式はRyeの方が簡潔

依存追加

poetry add requests

rye add requests

--dev オプションも同様に対応

依存削除

poetry remove requests

rye remove requests

ロックファイル作成・更新

poetry lock

rye sync

Ryeは uv により高速

パッケージインストール

poetry install

rye sync

スクリプト実行

poetry run python

rye run python

仮想環境シェル起動

poetry shell

rye shell

Pythonバージョン指定

poetry env use 3.11

rye pin 3.11

Ryeは pyenv 不要で独自DL可能

パッケージ公開

poetry publish

rye publish

twine 不要で簡易公開可能

Rye特有の機能と利点#

RyeはPoetryに比べて、以下のような特有の特徴を持ちます。

  • Pythonバージョンの自前管理

    rye pin 3.12 でそのバージョンを直接DLして使うため、 pyenvasdf は不要です。

  • 高速な依存解決

    uv を利用しており、Poetryより桁違いに高速です。

  • シンプルな設計と統合CLI

    rye fmt (フォーマット)、 rye lint (静的解析)、 rye test (テスト実行)など、開発で使う基本的な機能をすべて内包。

  • 自己更新コマンド

    rye self update によりrye本体を常に最新状態に保つことができます。

導入判断の目安#

以下のような観点で、Ryeへの移行を検討するとよいでしょう。

移行を検討すべきケース#

判断基準

説明

高速な依存解決が必要

大規模なプロジェクトやCIでの待ち時間短縮が狙える

Pythonバージョンの切替を頻繁に行う

Ryeの pin により自前で柔軟に管理可能

新規プロジェクトでシンプルに始めたい

設定ファイルや構成が簡素

逆に、以下のような場合はPoetryの継続使用が現実的です。

移行を控えるべきケース#

判断基準

説明

現在Poetryで安定運用中

無理に切り替える必要はない

チームやCIがPoetry前提で設計されている

スムーズな運用を優先

まとめ#

PoetryとRyeは似て非なるツールです。どちらもモダンなPython開発を支える優れた選択肢ですが、それぞれの特性を理解し、自身のプロジェクトのニーズに応じて使い分けることが重要です。

Ryeはまだ新しいツールですが、その軽快さと統一感は魅力的であり、今後の主流となる可能性もあります。まずは小規模な新規プロジェクトで試してみるのも良いアプローチでしょう。

記事情報

著者:

mtakagishi

投稿日:

2025-05-30